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第36話

室内の雰囲気が落ち着いた頃。 副会長さまと隊長さんのやりとりに仕事をしながら頷く書記さま。 大袈裟というか思わせぶりな口調のせいで変に緊張してしまうんだけど。 え、何か秘密でもあったりするの? 驚愕の特殊能力があるとか実は書記さまは女の子だったのよ、みたいな。 さっきの「そばづかえ」や「しゅじゅー」とやらも謎だし。 どきどきわくわく、ついでに多少のびくびく、も。 俺は隊長さんの話を真面目に聞こうと姿勢を正した。  *** 「というわけなのですが、ここまでご理解頂けましたでしょうか」 「う、えっと、あの多分……何となく?」 結構な時間をかけ説明してくれた隊長さん。 だがしかし、いや、そう尋ねられると何て言いますか、つまりその。 「ニャハハ~絶対ほとんど理解出来てないでしょ、わんわん?」 「す、すみません……」 隊長さんの説明は聞いたこともない名前や言葉の羅列で、正直、話の初っ端からついていくことが出来なかった。 とりあえず書記さまの家系が古くから続く由緒正しきなんたらで、グループ全体の総資産がどうたらで、次期総裁だか正式な後継者やらが書記さまだとかそうじゃないとか。 さらに隊長さんは将来、書記さまの秘書だか右腕やらになる予定で幼い頃から兄弟同然に育ったとか。 それが主従関係に必要な古くから続くシキタリで、ソバヅカエの決まり事らしい。 あ、主従については何となく理解出来た。 主(あるじ)とそれに従う間柄の人。主人と使用人、お城のお殿様(主君)と家臣……だそうです。 「会社の社長とその部下みたいな感じ?」 って聞いたら、 「少し違いますがまあそんな感じですね」だって。へー。 それから何だっけ。 本来のソバヅカエと隊長さんのソバヅカエは意味が少し違う、ってチャラ会計さまが得意げに説明してくれたけど。 うーん全く分からない。 そもそも本来のソバヅカエが何なのかが謎だし。 と言ったら苦笑されました。 「つまり僕は、書記さまの最も身近な『部下』になります。それと学園にいる間は身辺警護の他、食事や健康管理なども任されております」 「へ、へえ~…」 その説明を聞く限り、俺の想像するソバヅカエとは『SPとお母さんを足して2で割った』みたいな存在になりますけど。 .

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