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第37話

そういや書記さま、食事中によく隊長さんから「好き嫌いはダメです」と叱られてるよね。 うん、なるほど納得。 でも学園内で警護は少し大袈裟……と思ったら、実際そうでもないらしい。 「普段は暴行目的の生徒、もしくは教師・職員などを警戒しています。単純な暴力はもちろんですが、ここでは性的な意味合いを持つ場合が圧倒的に多いので対策は主にそちらを重点的に。ただし、書記さまを単純に好きだとか容姿に惑わされて、という理由ではなく例えば……最悪そういった行為中の写真や動画など、こちらの弱みを握られそれをゆすり・脅迫、相手側の会社に有利な取引材料として使われる可能性が――」 「へ!?」 「あ~怖いよねぇ、そーゆーの。俺もたまに何度か『うわぁこれヤバイかも』って思う時あるし」 「……」 ひゃはは、とおどける会計さま。 何故か黙ったまま怖い顔になる副会長さま。 会長と庶務さまも少しムッとしてるし。 ああああの、何だか急に部屋の空気がすっげー悪くなりましたよ隊長さん! 「そして可能性という点ではかなり低くなりますが、何より最も警戒しているのが外部の人間による拉致監禁、つまり誘拐です」 「ゆ、誘拐!?」 「身代金目的のな。または会社・グループへの復讐って場合もあるだろうが」 こっちはより深刻だな、殺されるか良くて売り飛ばされるか。 はたまた…… と続ける会長さまに、愕然とする。 え、何怖いこと普通に話してんの? 「俺、誘拐未遂されたことあるよ~」 「私も子供の頃に一度」 「俺様は犯人を殴り飛ばしてやったな」 とか変な話題で盛り上がるの止めようよ。 え、誘拐って日常茶飯事的にあることなの? 「ちなみに書記さまは子供の頃、六回ほど誘拐されかけました」 「六回!?」 いや絶対それ多すぎるだろ。 「お菓子くれる、って言うから……つ、い」 「昔から本っ当にあなたという人は、裕福な家の子供がお菓子ごときに何故――。まさか今でもそれに釣られたりはしませんよね」 「た、ぶん、大丈夫?」 「多分」でしかも疑問形なんだね、書記さま。 お金持ちの子供なのに食い物で誘拐未遂は、平凡家庭の俺でもさすがにどうかと思うんだが。 .

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