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第41話

でもって書記さまは机と向き合い、真面目にお仕事を再開して……いや、あれ? 俯いたまま何故か小刻みにプルプル震えているような。 ――バンッ!! 「皆ずる、い。もう無理、俺……わんわん我慢、出来ないっ! わんわん抱っこした、い。わんわん、わんわん、わんわんー!」 思いっきり手で机の上を叩くと、立ち上がってこちらを見る書記さま。 しかも半泣きだよこの人、鼻グスグスいってるし。うわぁ……。 これ、俺だけじゃないよね引いてるの。 さすがに他の皆も呆気にとられて口あんぐりだし。 「わんわん、俺のとこ来て?」 「は? いや、え」 「そっちの方が良い、の? なら俺が、そっち行く。わんわん抱っこ、する!」 パアア、と嬉しそうな笑顔を浮かべた書記さま。 両手を広げこちらへ突進―― 「駄目に決まってるでしょう。馬鹿言ってないでさっさとお仕事終わらせてください書記さま。勿論ちゃんとご自分の机の上で、お一人で」 する前に、隊長さんの冷気を伴う一言で轟沈した。  *** 「うっううっ、ぐすっ、わんわ、ん……」 「泣いてる暇があったら手を動かしてください。それと、今度くだらない真似をしたら容赦しませんからね」 「ううっ、わんわん……ひっく、わんわ……」 「ほらよそ見しない!」 お、鬼だ。ここに鬼がいます。 どうしよう、めちゃくちゃ書記さまが憐れに思えてきた。 眉を下げ、助けを求めるような悲しげな目をこっちに向けた途端、机の横に立つ隊長さんからまた叱られてるし。 「…………ワンコ書記の隊長さんってたまに本気で怖いよね」 「…………まあ、彼にはあれくらいがちょうど良いとは思いますが、確かに」 「…………俺様まで睨まれたぞ。あいつ馬鹿犬の側仕えのくせに迫力ありすぎじゃねーか?」 「先輩の側仕えたるもの、時には心を鬼にし苦言を呈することも必要なんです。さすが隊長さんです! で、どうして会長はこっちに逃げて来るんですか?」 「に、逃げてねーよ!」 身を寄せ合い声を潜めてコソコソ会話する生徒会役員の皆さま。 本人は否定しているが実際、避難目的でこちらに来た、ようにしか見えない会長さま。 それをまたもや年下の庶務さまに弄られる。 何なんだこの状態。 .

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