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第44話/中編/もっと知りました。

「あの、話って何でしょう。他の人に聞かれるとマズイ事ですか?」 「うーん、別にマズくはないんですけどね。あ、もちろん書記さまに関する内容ですが。さっきから邪魔が入ってばかりだし……すみません、ちょっと苛ついてたかもしれませんね」 そう言って苦笑する隊長さん。 あれからすぐ、生徒会室の奥にある簡易キッチンなどが完備された小部屋に移動した俺たち。 今は背もたれの無い丸椅子に並んで腰掛け、お湯が沸くのを待っているところだ。 んー。 考えてみればこの人と二人っきりって珍し、いや、初めてかも。 隊長さんと会う時って、ほぼ書記さまが一緒だからなぁ。 そうなると毎回、俺に馬鹿力で抱きつくあの人を叱って引き離さなきゃならない訳で。 (すみません、いつも感謝してます!) 親衛隊長としてだけじゃなくその点ソバヅカエって本当に大変そうだよね。 ああほら、溜め息もらしてる姿なんてまさに疲れたーって感じだし。 ところで、 こうやって改めて見るとやっぱ美人さんだよなぁ。 身長は俺よりちょこっと高いくらい? でもその容姿は親衛隊の女の子みたいな人たちと違って、中性的だけど少年らしい凛々しさもきっちりある。 あれ、そういえば隊長さんって―― 「もしかして、スッピン?」 「は?」 「え、だって色付きリップクリームとか睫毛くるんっとかファンデーションとかしてないですよね。なのに近くで見てもすっげー綺麗。うわ、やっぱ隊長さん本物の美人さんだぁ。あ、でも待てよ髪型変えるともしかして……ハッ! やばいこれ、めっちゃ男前に見えるかも。何それ美人さんで男前って隊長さんちょっ、ズルイよ絶対ー!」 「うん。わんわん君、少し落ち着こうか」 「痛っ」 頭に軽いチョップをくらい、正気に戻る。 「す、すみません。隊長さんの顔見てたらつい……」 実は仲良くなった親衛隊の人たちがお化粧のノリがどーとか美容のための涙ぐましい努力やら道具について、やたら懇切丁寧に教えてくれたことがあって。 「可愛くなるのは本当に大変なんだから!」 女子にしか見えない姿でそう力説され、凄いなーと感心したんだよね。 んで、親衛隊の中でも一際周囲の目を惹く隊長さんなんかきっと完璧なお化粧をしているに違いない。 そう思ってたのに、まさかのスッピン。 .

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