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第55話

「回し飲みはいけません、お行儀が悪いですよ書記さま」 「そ、そーだよ。わんわんと間接チューとか、ワンコ書記だけずるい!」 「おい、ずるいって何だよ。つかテメエの飲みかけをそいつに渡そうとすんな、チャラ会計!」 照れ隠しに聞いただけの、俺の一言。 それをきっかけに騒がしくなる生徒会。 あ、いや副会長さまと庶務さまは静かだ。 「わんわんと俺……昔、食事いつも半分こ、した。仲良し」 まあ、家族に内緒で部屋にノラ犬住まわせていたら、そりゃ自分のご飯半分こでしょうね。 「ちょっと待ってください。子供の頃とはいえ書記、あなた自分の食事を与えていたのですか? 駄目です! 人間と同じものをペットに食べさせるのは健康上良くないそうですよ」 「猫がネギ食べて中毒症状起こしたりー、とかぁ?」 「スナック菓子なども塩分が多過ぎて、与えるのは良くないんだったか?」 「チョコレートも動物は駄目らしいですよね」 えっと、ここでいきなり副会長さまと庶務さまも騒ぎに加わってくる。何故だ。 しかし副会長さま、本当に勉強熱心だなぁ。 あー…、でも。 もし俺が今日生きるか死ぬか状態のノラ犬なら、多少健康に悪くたって気にせず何でも食うと思うけど。 それもお金持ちの家の食事だよね? むしろ大喜びで皿も綺麗に舐めまくっちゃいそう、絶対。 想像したらお腹減ってきたし。 「そういえば犬に紅茶を飲ませても大丈夫でしたっけ?」 「コーヒーは確か良くないんじゃなかったぁ?」 「それはカフェインが駄目なのか、それとも豆の方か」 「待ってください、今調べてみます」 「わ、わんわん!」 「いや、だからあの俺、犬じゃなくて人間だし別に問題は」 ネギもチョコも紅茶もコーヒーも、全然ちっとも大丈夫。 涙目で「あっ、どうしよう!?」みたいな悲壮感出すの止めてください書記さま。 何気にソワソワしながら「飲めないならその紅茶、僕にくれる?」的な視線を寄越されても困ります、庶務さま。 必死に犬の飼い方マニュアルを読む副会長さま……は、補佐になった最初の頃に高級ドッグフード大量購入しようとしやがったんで、俺あの時ちゃんと説明しましたよね。 .

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