60 / 89

第60話

同意無しに首輪をつけて部屋で人間を飼うのは、要するに監禁だよね会長さま。それ犯罪ですから。 あと、俺は書記さまのモノじゃないし。でも会長さまが犯罪者になりそうな時は是非助けてください、庶務さま。 副会長さま、俺は犬じゃないのでモフれないよ? アハハハ。 もう、呆れというか諦めというのか、複雑な気持ちで苦笑するより他にどうしようもないや。 と立ち尽くしていたら。 ――ぶちぃっ 「ダメー! わんわん俺だけの。絶対、誰にもあげない!」 「え、うおわぁッ」 「は!?」 「待っ、書記さま――」 予想以上の怪力で縄をぶち切り、ソファーから立ち上がった書記さまが叫び声と共に突進して来た。 と思ったら一瞬で俺を肩に担ぎ、そのまま生徒会室を飛び出す。 驚きに見開かれた役員さま方の瞳と、焦った表情でこちらに伸ばされた隊長さんの手。 それらを残し、あっという間に遠ざかる生徒会室の扉。 少し遅れて中から皆が飛び出して来るのが見えたけど、すぐまた視界から消えていった。 あ、すんごいデジャヴ。 どうやら俺は再び書記さまに拉致られたようです。 たーすーけーてー!? あと、お腹が圧迫されて「ぐえっ」てなるから。せめてこの体勢は勘弁してくださいぃ。 「わんわん暴れない、ちょっとだけ我慢」 「うぐ、しょんな……」 「わんわん? わんわん大丈夫?」 「えっ何、うぎゃあ!?」 突然身体が浮いたと思ったら目の前に書記さまのドアップが。 び、びっくりした。 体勢が急に変わったのと未だ慣れない至近距離で見る美形顔に、心臓もバクバク……。 って、またお姫さま抱っこされてるし俺。 あのね書記さま、これ確かに苦しさは無いけど男としての(なけなしの)自信も無くなるんです。 「っ、はーなーしーてー!」 「わんわん暴れたら、危ない。でも、元気になって、良かった」 「え」 じたばたする俺を抱え、安心したように優しく笑う書記さま。 あれ、おかしいな。 さっきより動悸が激しくなった気がする。不整脈? 「わんわん、顔赤い。暑いの?」 「へ」 「もしかして、熱……病気!?」 「あっ、いや、ちち違います。これはその大丈夫だから。き、気にしないでッ」 .

ともだちにシェアしよう!