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第77話
その代わり俺を両腕で囲い込みギュッと抱き締めてくる書記さま。
うわー良い匂いがするし、あったかい。
などと言ってる場合じゃなかった。
お願いです、それ以上腕に力を入れないでください。苦しくて死にそうになるから!
というかさっきまで(多分)寝惚けながら人の身体を好き勝手弄くり回してたくせに、いきなりシリアスに突入しないで。
言ってる意味がよく分からないけど、俺は書記さまのせいとか馬鹿とか嫌いだとか思ってないし。
まあ、たった今「馬鹿」って叫びましたけども。
うぐっ?
何故かさらに締め付けがキツくなっただと。
ハッ、もしやこれ実は今もばっちり寝惚けてますとか言わないよね。
だ、駄目だもう、苦しいぃ――……あれ?
「わんわん、俺が嫌いじゃない? 俺のこと、好き?」
締め殺されそうな痛みが消えた。
横向きだった身体は何故か仰向けで、目の前にいる書記さまの背後には天井が見える。
「わんわん、俺を……好き?」
「えっ、あの。好きか嫌いかなら多分どちらかと言えば、好きな方かと」
うう、ちょっと寒い。
ああそうか、今まで密着していた書記さまが俺を見下ろす形で四つん這いになってるからだ。
俺が重くないようにと気を使ってくれたのかもしれない。だけど、シーツごと書記さまが持ち上げちゃっているせいで二人の間に隙間が出来てます。
嗚呼、ぬくもりが恋しい。
「わんわん大好きーッ」
「うぎゃああ!?」
再びギュウウウと抱き締められ、頬擦りと、顔中に大量のキスが降り注ぐ。
欲しかった温もりは必要以上。興奮し過ぎな書記さまの体温だか熱気やらで、汗ばむほどに暑い。
そして何故か下半身の方におかしな動きを感じるんですが。
ちょっ、待って当たってるから!
「ひいっ!? 止め、それ止めて……当たって、書記さまダメ……!」
「わんわん、チュッ、わんわん俺の、チュッ、わんわん好き。わんわんも俺を、チュッ、大好き。嬉しい!」
「や、ああっ……動かな、書記さま! ひうっ、ダ、ダメ擦れ――」
「離れろケダモノ」
地獄の底から聞こえたかのような恐ろしい怒りの声。と同時に痛そうな音がして、俺の身体にのしかかる重みと締め付け、その犯人である書記さまの姿は消えていた。
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