1 / 26
第1話 ~出会い編~
西塔蒼真(さいとうそうま)は、2年になったばかりのほどほど真面目な男子高校生だ。
顔も正統派イケメンで背も高いとあって女子にはモテるが、奥手な不器用男子。
その為、彼女いない歴=年齢というやつだ。
なので、部活に精を出していた。
そんな蒼真は先日大会が行われた影響で久し振りの部活休みに、こうして誘われて友人宅へと遊びに向かっているわけだ。
友人の来栖慎(くるすしん)は、高校2年に入ってからクラスで仲良くなった。
決して悪いヤツでは無いのだが、自由奔放な性格で蒼真はたま~に振り回されていた。
ピンポーン♪
普通な住宅街にある普通な一軒家。
表札には『来栖』とある。
間違いない。
チャイムを鳴らして暫くしても誰も出ない。
「?」
ピンポーン…ピンポーン…ピンポンピンポン、ピン
ガチャッ
居るではないか。
蒼真が若干眉間に皺を寄せて、相方に文句を言おうと思ったら知らない人物が顔を出した。
誰?
「…どちらさま?」
相手もキョトンと蒼真を見上げていた。
通された部屋は二階にある小綺麗なサッパリした6畳間。
何故この部屋?
どう見ても慎の部屋ではなく、彼の部屋だった。
棚には小難しそうな大学関連の物と思われる本が…。
「はい、お茶~どうぞ~」
「どうも…」
相手は逢坂真生(くるすまお)と言うらしい。
慎の兄と名乗った。
顔は慎とあまり似ていない。
男に美人というのも違うかもしれないが、先日告白してきた学内で有名な美人上級生よりも妖艶?な雰囲気がある。
第一に、格好がヤバイ。
純白のボタン、もう少し止めた方がいいのでは?
白い胸元が見えそうで見えないとか…。
カーゴパンツから覗く膝下の白く細い足も同じ男とは思えない。
クラスの女子よりも下手したら細いかもしれないのだ。
真面目な蒼真も一応は思春期男子。
ちょっとドキドキソワソワしてしまう。
相手は男。相手は男だぞーっ!
心の中で叫んでみたり。
「慎は~買い物に出てるの…。だから、待ってねぇ」
妙な間延びした物言いも真生だと気にならない。
それにしても変わった人だ。
「あ、はい。コレ良かったら…」
「?…わぁ~、ありがとう」
ドキッ!
蒼真が手土産を渡すと、綺麗な笑顔に似合った声でお礼を返された。
相手は男っ!
それにしても慎のヤツ、コンビニにでも買い出しか?
前もって準備しとけよな。
いや、連絡くれたら俺がついでに買ってきたのに。
「え?」
なんて思っていた蒼真は、次に驚いて隣を見た。
コレは一体何でしょうか?
妖艶兄・真生が隣に座ったかと思うと肩と肩が触れ合った。
じ~っ
視線を感じる、視線を…!
間近で見詰められ、蒼真はダラダラと内心汗をかいていた。
何でこんなに見られてるの?
「あの…離れて貰えますか…?」
「ん~、何でぇ?」
「何でって、それは…」
ポテッと肩に掛かる重さ。
真生の小さな頭が乗せられている。
ゴクッと生唾を飲む。
男のくせに良い匂いがするとか、反則ではないだろうか。
初めて会った相手に、この人は何故ここまで密着出来るのか。
そして、何故無駄に…可愛いのか…。
オレ、この思考…もしかしてヤバイ?
この不思議な状況と自分のヤバイ思考に、慎の早い帰宅を心から願う蒼真なのだった。
ともだちにシェアしよう!