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第9話~あの人を見ないで下さいお願いです編~
剣道部に所属している蒼真は、幼少の頃からしていたこともあって、実力はかなりの物だった。
鳴り物入りした部内では、最初こそ先輩にやっかまれもしたが、有無をいわせぬ実力で今の確固たる地位を築いていた。
かといって威張っている訳ではなく、団体戦ではレギュラーは勿論、皆から尊敬の念で見られていた。
性格は真面目で、かといって堅苦しくなくどちらかというと爽やかな蒼真は、先輩たちからも可愛がられていた。
蒼真が爽やかなイケメンという事もあり、女子からの人気もそれなりにあるので、あわよくば紹介をして貰おうという魂胆も見え隠れするが…。
「って、おい!あそこ見てみろよ!!」
顧問が居ないとはいえ、私語はなるべく控えて練習に打ち込む剣道部だが、上級生の渡部が隣の田畑に興奮した様子で訴えた。
「ん?…おっ、美人!!」
そんな田畑の声に、周囲もそちらへと視線を向ける。
どんどんと視線が波のように吸い寄せられていく部内の様子に、蒼真も漸く気がついた。
一体何を見てるんだ。
練習しろよな、全く…。
なんて呆れた様子でそちらに視線を向けて、心底驚いた。
「!!!?」
ちょっと、待て。
何であの人がここに居るんだーっ?!
蒼真の視線の先には例の美人が居て、何処かワクワクした様な顔でこちらを見ていた。
蒼真が自分に気がついたと分かった真生が、ゆっくりほわほわとした表情で手を振った。
その途端に、ドワッと館内がざわめいた。
あ~もうっ!!
何してんだあの人はっ!?
「ちょ、皆は見ないで下さい!あの人は毒物なんでーッ‼」
面を取ると思わず部員に向かって、叫んでしまった。
「何いぃ?!あの人、お前の知り合いか?!」
「誰だよ、あの人は!!」
「紹介をしろーッ‼」
そんな部員を無視して、真生の元へと走った。
「ちょ、あんた!何でこんな所に?!」
蒼真の慌てっぷりはどこ吹く風。
「会いたくて~来てしまったんだよねっ!こんにちは~」
真生は、ニコッと笑い嬉しそうに言うとペコリと頭を下げた。
…。
何…この人。
蒼真は未知の生物を前に、固まったのだった。
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