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第10話~意識は全て彼の元へ編~

真生は懐かしい校舎を見上げながら、弟の後をトコトコ着いていく。 学生時代、先生からも友だちからも仲良くして貰ったものだ。 時々うんざりする程に構い倒されるので、誰も来ない場所を求めて逃げ出したこともあったっけ…。 この頃は既に真生はフェロモン過多で、男共を引き寄せ捲っていたのだが、いかんせん。 真生は超絶鈍感男だったので、全く気がついていなかった。 男共はお互い牽制しあっていたし、当の本人がド天然野郎だったこともあってか、おつきあいに発展したことは無い。 「おーい、こっち」 真生が懐かしさに浸っていると、いつの間にか差が開いていたらしい。 慎が道場の中へと指を向けている。 「!!」 どうやら蒼真は中に居るらしい。 真生は、お目当ての蒼真を見ようと、慌てて慎の所へ駆け寄った。 慎の隣へ陣取ると、真生は中を覗いた。 そこでは手前に剣道部、奥に柔道部が稽古に励んでいた。 「蒼真、剣道部だから」 慎の言葉に剣道部員へと顔を向けると、自然と真生の視線は一点へと吸い寄せられた。 正座をしている男の背筋はピシッと伸びて、凛としたオーラが漂っている。 立ち上がると、名前が確認できた。 「あ…」 蒼真だった。 彼が相手と竹刀を合わせる姿に、真生は意識を全て持っていかれ、慎の掛ける声は全く聞こえていなかった。

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