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第1話 聖也、マジック!

いつも思う事だけど、 こんな平凡な顔を人気モデルの顔へと 変えてくれる聖也さんのメイク技術はホント神だ。 「んー、じゃあ目ぇ閉じてねー」 「はい」 全てを委ねるように瞼を閉じる。 「ふふっ、この表情ってさ、まるでキスを待ってる みたいよねぇ……してもいい?」 「ダメです」 「まーたんのけちんぼー」 会話の内容は置いといて、 聖也さんはこんな風にメイクされてる人を 退屈にさせない。 ホントすごい人だ。尊敬する。 ……ちょっとチャラいところさえなければ。 ささやかだった二重がくっきりおメメの 綺麗な二重になり、アイシャドウがのって、 目の淵にラインが引かれる。 口は派手すぎないリップで薄っすら色づけ、 グロスでぷっくりツヤツヤに。 次々と手際よく施され、 ものの数分でメイク終了~。 「はーい、メイク完成。お疲れさま」 「ありがとうございます」 「それじゃ、ウィッグも付けるねー」 ピョンピョン跳ねまくっている俺の髪を ネットの中にしまい込み―― 、 上からロングの黒髪ストレートなウィッグを 被せられる。 取れないようピンでしっかり固定して、 少し整えてからカチューシャを乗っければ、 カリスマティ-ンアイドル・神宮寺 ミオの完成。 「今日はワンピースに合わせて清楚系でまとめて みましたー。うん、我ながら完璧ね」 ガチャッ ―― 「準備できたか」 丁度いいタイミングでチーフマネージャーの 手嶌 柊二さんが戻ってきた。 「はい。オッケーでぇす」 そして、手嶌さんが押さえてくれているドアから 俺を先頭に3人並んで出ていく。 ここから出れば俺はカリスマモデルのミオだ。 いつも堂々としているミオにならなくちゃ いけない。 今日の撮影も何事も無く終わるといいけど……。

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