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宰相の仕事は早かった。 世話役を通して商店街の通りと家の入り口を固め、アレクを近所で保護して貰うように手配していたのだ。 「アレクはうちで預かるよ。 先ずはアルフリートに付き添っておやり」 「すいません、急に…」 「大丈夫。 あの子が家の大部分を解放して託児所や工房を開いてくれたお蔭で、どれだけこの町の人間が助かっているか。 安心して親は共働き出来てるし、学校では教えてくれない職人のイロハを学んでから奉公に上がれてもいるんだ。 有難いことだよ。 だけどあの子は安息日にも休まないし、発情期にも仕事をしていた。 皆、気になってたんだよ。 疲れだって溜まってただろうし、キツい発情期に入ってしまうのも頷けるってもんだ。 ちゃんと収まるまで付き添ってあげて」 「…は、はい」 「これさ、火照りが楽になる薬湯。 飲ませてあげて」 「あ、ありがとう」 「お互いに想い合ってんのに全然気づかないって、皆やきもきしてたんだよ。 そろそろ捕まえてやんなね。はい、これ」 「あ、どうも…」 商店街の皆さんが気付いていて、自分達が全く気付いていなかったとは。 薬湯や片手で食べれる物、焼き菓子や果物。 沢山の物が詰まったバスケットを一言と共に手渡され、リカルドは恐縮するしかない。 「あれだけ働き者で気性も穏やかな嫁さんなんて、何処を探しても見つからないよ。 ちゃんと気持ちを伝えて捕まえなきゃだ! 一世一代の大勝負だよ!頑張んな!」 「はっ、はい!」 背中を押され、リカルドは階段を上った。

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