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小林とムエタイ1
放課後も両手に風紀で下校した。
最上階行きの委員長と別れて、エレベーターを降りた。
部屋に入ったところで、小林からメールが来た。
「千尋、今日の……」
「高槻先輩。ちょっと黙って」
「あ、ああ」
狙い通りの長文メールだ。
流石だ。小林。
なになに……ムエタイとは
『世界最強の立ち技格闘技で500年以上の歴史がある。
タイは歴史上、一度も植民地になったことがない、アジア唯一の国なんだ。
白兵戦でのムエタイの威力の為とも言われている。
16世紀のアユタヤ王朝時代。捕虜となったナレスワン王はビルマ王に「我が軍随一の戦士と闘い、勝てば解放してやる」と言われ、見事ムエタイで勝利し、自由を手にしたと言われる。
現在では、ギャンブルとしてムエタイの試合は毎日のように行われている。
パンチやフック、回転肘打ち、後ろ回し蹴りなど。
古典ムエタイでは、108個の技があり、仏教の煩悩の数と同じと言われている。
古典神話、仏教とも繋がりがあるんだ。
世界の格闘家達は、最終的にはムエタイにたどり着くと言われて、K1選手でムエタイを習得している選手もいる。
歴史が深いけど、「マッハ」って映画をみるといいよ。CG、ワイヤー無しのガチンコムエタイアクション映画だ』
相変わらずだ。すごいな、小林。
最強の格闘技かぁ。
ふと視線を感じて顔を上げると、ちょっと寂しげな表情をした高槻先輩だ。
「あ」
忘れてた。
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