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千尋とウォーキング2

翌朝、俺はいつもよりずっと早く起きた。 半袖Tシャツとハーパン、ペットボトルの水だけ持って、こっそり部屋を出た。 初夏の朝は暑くもなく、寒くもなく、運動するには丁度いい感じだ。 早朝の空気が気持ちいい。 俺は寮を出て、裏の林の小道へと歩いて行った。 山奥にある学園だから、緑が多くて気持ちいいや。 俺は大きく伸びをして、トレーナーさんに習ったフォームで歩きだした。 誰もいない小道を歩いてると、ふと人の気配を感じた。 見ると、生徒が一人立っている。 「?」 俺みたいに運動するぞーって格好でもなく、ラフな部屋着だ。 こんな時間になんだ? 俺は立ち止まって、水を飲んだ。 「あ!」 よく見たら、野生のリスがちょろちょろっと木から降りて、そいつの肩に飛び乗った。 なにあれ。超可愛い! 「!?」 俺の声に驚いたそいつが振り返った。 サラサラの黒髪が揺れた。その生徒はどっかの国の王子様みたいな顔をしていた。

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