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キスマークとキスマーク5

「千尋!!」 高槻先輩が焦った顔で飛び込んできた。 「良かった!」 ソファに座って俺の肩にぎゅっと手を乗せて、はぁ~っと俯いた。 そんなに心配かけちゃってたんだ………俺、大人なのに(脳ミソは)情けない。 「高槻先輩、ごめんなさい」 「いったいどうし………!? これは、どうしたんだ!?」 「えっ?」 「………誰がつけた?」 高槻先輩が底冷えのする声音で聞いた。 な、なに!? こ……怖ぇえ! あ! キスマークか! 「あ~。俺だ」 委員長が「はーい」と挙手して言った。 「委員長!! どうゆうつもりですか!?」 高槻先輩がすごい剣幕で噛み付く。怖え! え? え? 大丈夫? ケンカになったりしない? 「あ、あの」 「こいつ、ヤリチン会計に追いかけられて逃げてたんだとよ。だから、男避けにつけてやったんだ。御守りだ。御守り」 「だからといって………」 「お前もつけりゃあいいじゃねえか」 「なっ!? 俺は、そんな………!」 高槻先輩が俺を見た。思わずビクッとしてしまう。 「しないから。しないからな、千尋」 高槻先輩はちょっと赤くなって、目を反らした。てゆうか、当たり前でしょうが! 何照れてんの? 「落ち着け。暴走すんなよ。高槻」 「!」 あ。もしかして。 会計がつけたって知ったら、高槻先輩は会計を殴りに行きそうだ。 ウォーキングがバレた時もだけど、高槻先輩が怒ると、ガチで怖いし、実力行使で来る。ヤンチャな生徒に罰ゲームキックとかやってるし。 ワザと委員長がつけたって言ったのかな? 委員長を見ると、ニヤッと笑われた。 でも、だったら嘘吐くだけでよくね? ほんとにキスマークつける必要ないじゃないか。 いくら嘘が嫌いだからって………俺はモヤモヤしながら、ニ人のやりとりを見てた。

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