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ナウシカ兄さんと大人のきのこの山[side 南方]
[side 南方]
ゆっくりと目を開けた。
今日はずっと自室で過ごした。生徒会役員の特権で自室学習が許されているから、授業に出ない日も多い。
成績自体は常に上位なので、教師からも何も言われない。
この状況が良いわけがないとは分かっているけど………でも、どうしても人の多い場所は苦手だった。
『蓮はそのままでいいんだよ』
俺は桜真の言葉を思い出す。
彼はこのままでいいと言ってくれる。
無理に他者と関わる必要は無い。一人で過ごすことは、いけないことではないと。
以前まで、休みがちではあったけど、それでも授業に参加し生徒会室にも顔を出していた。
桜真と知り合ってから、ほとんど教室に行く事が無くなった。
生徒会室にも全く行っていない。
誰とも会わず、誰とも話さない日が増えた。
とても楽になった。
でも………心にいつでも漠然とした不安がある。
千尋なら、なんて言うだろう?
ふと、千尋が今朝「ナウシ……蓮もキノコの山派? 前くれたでしょ。キノコの山の大人味美味しいよね」と、話していたのを思い出した。
なんとなく食べたくなって、俺はこの日初めて外へ出てコンビニへ行くことにした。
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