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千尋とシャイニングウィザード2
「まぁ座れ」
理科準備室で俺は要先生と向かい合って座ると、先生は複雑な表情で俺を見た。
「何ですか?」
「………お前。俺に相談したいことがあるんじゃねぇか?」
「? いや、別に?」
ホスト教師らしからぬ真摯な瞳で俺を見ていた。
「お前が同室の高槻を好きになって悩んでるって聞いたぞ」
「はぁ!?」
俺はギョッとして目を見開いた。要先生は俺の両肩に、そっと手を置いて言った。
「男同士だとか悩んでるのかもしれねぇが、人を好きになるのに性別なんか関係ねぇからな。俺が相談にのってやるから。一人で抱え込むな」
「待て待てッ! 違うから! それ誰に聞いたの!?」
「違うのか?」
「違います!! 俺ホモじゃねぇし!!」
はぁ~とため息を吐いて、要先生は項垂れた。
「誰に聞いたんです?」
「匿名でな。お前が死にそうに悩んでるから、教師として話聞いてやれって学校の俺のパソコンにメールがあったんだよ」
げぇ!なんじゃそりゃ!?
「とにかく! 違いますから、もう行っていい? お腹空いたし」
平野も待ってるしと、立ち上がった俺の腕を要先生が掴んだ。
「お前、好きな奴はいんのか?」
「いないですよ」
だってここは男子校だし、ギャルはいないし。
「あっ」
ぐいっと腕を引かれて、椅子に座ったままの要先生の足をを跨ぐように倒れ込んだ。俺は要先生の腕の中にすっぽり収まった。
「この学園にいるうちは清いまんまでいろよな」
「何言って、あ!」
チュッと耳元にキスを落とされた。
思わず俺はビクッと小さく震えた。
「感じやすい体しやがって。先生は心配だよ」
おまけとばかりに、ちろっと耳裏を舐められた。
「ひゃ、ぁ………やだっ! 離せ!」
俺が暴れだすと、ホスト教師はあっさりと俺を離した。
「このセクハラ教師!!」
要先生は、ハハッと笑った。
「卒業するまで処女童貞でいろよ」
最悪! 処女はともかく、童貞は捨てたいわ!
「死ねっ!」
俺は捨てゼリフを吐いて理科準備室を出て、平野の待つ1-Dへ急いだのだった。
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