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第2話

どん、と鈍い音がして目を開けた。 天井が見えて、ここが自分の部屋だと気づいた。 夢見てたんか…。 ベッドから身を起こすと、床にタオルケットにくるまった男がいる。 いや、パッと見には男とは思わんかもしれん華奢な体にきれいな顔やけど。 そやけどこいつは見た目通りの天使やない、なかなかの肉食ビッチや。 さっきの音はこいつが落ちた音らしい。 床に落ちたまま、それでもすうすうと寝息を立てている。 思わずじっと顔を見た。 寝顔は天使やな。二十歳も超えたのに、こんなかわいいままって詐欺やろ。 …えらい懐かしい夢をみたもんや。 バイト先で出会ったんは、俺が高3、こいつが高2のとき。 あれからもう3年近く経っていて、こいつはあっちへふらふらこっちへふらふら、色んな男を渡り歩いて泣かされてばかりいる。 理由はわかってる。 こいつがあほやからや。 狸寝入りの髪に手を伸ばし、触れる直前でわざと手を止めてやる。 お前、どうするつもりや? 俺が触れたら、してやったりな顔で笑う? それとも少しは動揺したりする? そのままゆっくり5秒数えて、手を引いた。 わざと落ちたお前なんかに触るか、どあほ。 俺はさっさと起き上がり、シャワーを浴びて家を出る。 酔っぱらって夜中に転がり込んだあいつは放置だ。 勝手に帰れ。

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