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第3話

ドアの閉まる音を聞いて、僕はそっと目を開けた。 本当に出かけてしまったらしい。 もう大学の時間なん?  大学に行ってない僕には奴のスケジュールは掴みづらい。 ベッドから落ちてみせたのに、引き上げてもくれへんなんて冷たいやん。 手を伸ばしたのに触りもせんて、どないやねん。 撫でてくれたら、手ぇ掴んでキスくらいしたろと思てたのに。 それともちょっとは驚いた顔してみせたほうがええ? どっちにしても、もすこし親身にかまってくれてもええんちゃう? そら夜中の2時に転がり込んだのは悪かったけど。 テーブルの上に鍵とメモ。 「ポストに入れとけ」 毎回律儀におんなじ文面。 週に1度は押しかけてんのに、いまだに合鍵一つくれへんなんて、ホンマにいけずな男やな。 せめてキスの一つもくれたらええのに。 どんな男と遊んどっても、冷たい目ぇして泣いてる僕を前にして「あほやな」の一言だけで慰めてくれるわけでも止めてくれるわけでもない。 そのくせこうして転がり込んだら泊めてくれる。 そやけどホンマに泊めるだけ。 僕が好きやてわかってんのに、隙だらけにしとっても指一本触れてこん。 あんな薄情で頑固な男に、なんで僕は惚れてんのやろ。

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