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序章・2
そこは太陽神アポロンが生み出した力強い太陽の光が広がり、水の精霊ウンディーネの祈りによって大地を潤す雨粒が澄んだ青空から降り注ぐ。アポロンが生み出す陽光は雨粒に乱反射してダイヤモンドのように美しく輝く。
美しい雨は悪戯好きな精霊シルフの風で運ばれ、やがて風に乗った輝く水滴は三つに分かつ山河となり、涸れることのない湖へと行き着く。
植物や花々は美しく咲き乱れるそこは生きとし生ける者すべての理想郷。天界 。
その天界では今まさに新たな生命の誕生を迎えようとしていた。
英雄王ギデオンと女神アデルの体内に宿った愛の結晶が花開く。今日が出産の日だった。
天界の誰しもが、二人の間に生まれてくる子供は女の子ならばアデルのように美しくしなやかで赤褐色の艶やかな髪を持ち、男の子ならばギデオンのように強くたくましい、凛々しい赤子であると疑わなかった。
天使たちは美しい歌声で――。
妖精たちは華麗なダンスを披露し、神々は新しい命の誕生を今か今かと待ち望む。そして天界は祝福の光に包まれ、喜びに満ち溢れる――筈、だった。
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