しかし、理想郷とも言われた天界に響き渡ったのは祝福とは真逆のものだった。 　赤ん坊がこの地に産声をあげた瞬間、天界の空は今まで存在しなかったアポロンの太陽を打ち消す黒雲が覆いはじめる。大地が震え、荒れ狂う。穏やかだった天候は見る影もなく嵐に見舞われた。 　なんと英雄王ギデオンと女神アデルの子は、それはそれは見るもおぞましい姿をしていたのだ。 　ギデオンともアデルとも似ても似つかぬその子は、蛇のような黄色い眼に口から飛び出る長い真っ赤な舌。それから青白い蒼白な肌を持っていた。魔力は神々しい光を帯びたものではなく、邪念そのものだった。 「なぜこのようなことに……」 　英雄王ギデオンは頭を抱えた。 　自分は真っ当に生きてきたつもりだ。平和を愛し、緑や自然の摂理には逆らった覚えはない。ではなぜ、このような惨事になってしまったのか、と――。 　その時だった。 　"たとえ我が死したとしても命を奪いし罪は消えず、永遠に報いを受けるだろう。" 　雷鳴轟くその中で、ひとつの醜い声が響いた。