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Suddenly ひまわり
星が綺麗だな。
満天の星空に思わず目を奪われた。
気分転換に外の空気を吸いに出てこんな当たり前の事に気付く。
東京では星空を眺める余裕すらなく、ただ研究室とマンションの往復で精神が擦りきれていく生活だった。
将来を嘱望されて入ったはずの環境保護団体で下らない権力争いに巻き込まれ、さらに学閥に属さない貴之に風当たりは厳しく息がつまりそうだった。
全てをリセットしたくなり、かねてより誘われていたこの研究機関に逃げてきた。
煙草を1本吸う時間だけ休憩をとり実験に戻る。
気がつけば他の研究員はすでに帰り広大な施設には貴之だけになっていた。
照明を落とし戸締りを確認して年代物のオフロード車に乗り込む。
研究室から郊外に借りているロッジまでは林を突っ切って30分だ。この時間鹿や他の野性動物に出合う率が高いので注意する必要がある。
すでに数回の遭遇でバンパーは原形を留めていない。
バカンス用のロッジをこの時期借りているのは貴之の他にいないため静かな生活を送れる。
街まで遠いところが難点と言えるがどうせ寝るだけの仮住まいだ。
舗装されていない林道をゆっくりと進んでいく。
時折暗闇に光る目を見つけてさらに速度を落とす。
車のライトに硬直する鹿をやり過ごしホッとしたところで目の前を何かが横切った。
そして続く衝撃。
ブレーキを踏み車を端に寄せてフロント部分を確かめた。
何かを撥ねた痕跡にため息が出る。
どれだけ気をつけて運転していても避けようのない場合もある。
命を奪った罪悪感はなかなか消えないものだ。
リアシートからライトを取りだし今来た道を照らし撥ねたものを確認しに戻る。
動物ならまだいいが、もしかして人間だったら?
それほど距離が離れていないところに狼が2頭横たわっているのを発見した。
1頭は明らかに絶命している。
スピードは落ちていたとはいえ真正面から撥ねられ首が折れている。
可哀想に。
慎重な狼にしては珍しく車の前に飛び出してきた。
最初に横切った何かを追いかけていたのか?
もう1頭は見たところ外傷は確認できないが衝突の衝撃で気絶しているようだ。
このまま放置して自然に目覚めるのを待つか。
さすがに野生の狼の治療は出来ないしな。
煙草に火を着けしばらく思案していると狼の体がうっすらと光り始めた。
そして信じられないことに前肢はすらりと伸びた腕に、後ろ肢はほどよい筋肉の付いた脚に、鋭い歯を持つ顎はスッキリ歯並びのいい唇に変わり、みるみるうちに人間へと変化していく。
こんな映画あったよな、あり得ない光景に昔見た古い映画を思い出した。
狼人間。
まさかな。
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