90 / 101
暗中模索→sideT
連れてこられてから、一体何日がたったのか全く見当がつかない。目隠しはされたままだし、トイレも見張りつきだ。
風呂にも入っていないので、皮膚も気持ち悪い。
今が朝なのか夜なのかすらまったく分からない。
「オマエの父親は、薄情だよな。手紙にも全く反応してこないなんてな。簡易書留で送ったから、届いてるのは確かなんだけどな」
今更そんなこと突きつけられなくても、オレは父親の性格は知っている。
あいつは世間体とか地位とかを大事にする。だから、ずっとおふくろを泣かせていた。
それで平気な顔している男だ。オレが攫われたからって病院をなげうつような事はしない。それは、分かっている。
「…………漁船に売り払うか、内臓かっさばいて売り払うか……どうしようかねぇ……」
掠れた低めの声でオレをビビらせようと耳打ちする男が、この事務所を任されているやつなのだろう。
1番落ち着いた雰囲気があり、近くにこられるとタバコと香料マジリのイヤな匂いがする。
今さら、そんなのでビビりはしない。
もうオレには何もない。士龍に会いたいとは思っていたが、たぶん拒否されるに違いがないので、この際どうにもなるわけはない。
また、おふくろを泣かせてしまうことが、後悔だけど。
「親父がオレのために、仕事を台無しにすることはしねえよ。…………好きにすりゃあいいぜ、腎臓でも心臓でももっていけ」
ヤケになって言っているわけじゃない。
そんなことはない。
助けなんかこない。それは事実だ。
期待なんかするだけ無駄だし、今さら足掻いても仕方がない。
恐怖すらも通り過ぎて、覚悟を決めてしまったら、他には何もないのだから、サッパリこの世への未練は断ち切れた。
「こりゃあ、泣いて命乞いするかと思えば、肝が座ったわっぱもいたもんだな」
するりと黒い布を外されると、目の前には色眼鏡をかけたスーツの男がオレを面白がるような見下ろしている。
急激に襲ったは光の眩しさに目をチカチカさせながら、怯まずに見返す。
「…………命乞いして、救われるならさ、いくらでもするけど?そんなにアンタたち甘くないんでしょ」
虚勢と言うならいえばいい。
ハッタリだろうとなんだろうと、こっちは腹をくくっている。
「く、生意気言いやがって。こーこーせーらしく甘えたことを言えばいいのによォ」
逃げるにしても、20人はいそうだし、何しろ拘束されていて身動きできない。
1人でどうこうできるわけがない。
「まあ、伊達に東高に入ってねえってことか。その気合い、気に入った。このまま俺の下につかせてやる。鉄砲玉も楽しいもんだぜ」
色眼鏡の男はオレの目を好意的に見返し、ニヤリと楽し気に笑った。
ともだちにシェアしよう!

