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虎穴虎子→sideN(直哉)
突如現れたのは、北高のハセガワと呼ばれる有名なワルである。っても、うちの高校にとってはのワルであり、絡みにいかなければほとんど無害に等しい。
士龍サンと話を軽くした後で、士龍サンの幼馴染のトール君と言われても、どっからどう見ても俺らにとってはハセガワである。
確かに、前からずっと士龍サンはハセガワに絡むなとはかなり強く言われてはいた。
絡んでも自分は助けてやれないとまで言われたくらいだ。まあ、言わなかったが、富田のことは助けにいったみたいなんだが。
……何かあるとは思っていたが、幼馴染みとは。
そんなことは、栗原さんも言ってなかったので多分相当かくしてきたのだろう。
士龍サンと変わらないくらいの身長、しっかりとした筋肉がついているのはジャケットごしでもみてとれる。
ハセガワの隣に立っているのは、まるでモデルのようなすらりとした身体つきをした、全身からオーラを放つ栗毛のイケメン。
士龍サンもイケメンだが、タイプが違う完璧なイケメン。もはや現実ぽくないくらいの王子っぷりにも見える。
彼が市内でも有名なスケこまし王子で、ハセガワの相棒であるヒダカであるのは確かだ。
金崎の一派が手を出したって聞いたが、そりゃ、出してもいいかもしれないくらいかもしれねえなども考えられる。
「で…………いつ突っ込むンだ?」
ハセガワは伺うように、士龍サンの顔を横からのぞきこむ。
ヤクザへのカチコミとか言っても、まったく怯んだ様子はないのは流石だ。こんな命懸けの危ないことに巻き込まれてくれるくらいは、仲が良かったのだろうか。
「場所がわかんなくて、いま、偵察隊だしてんだよ」
士龍サンは、スマホで偵察隊からの情報を確認しているようだ。
時間がかかればかかるほど、富田の命が危なくなる。
「そか、そりゃ困るな。……俺ら、夜デートするからさ」
ハセガワは嬉しそうな表情をしている。あの2人が付き合ったという馬鹿な噂は、あながち噂だけじゃないのかもしれない。
「あ、時間ないなら助っ人は…………」
申し訳なさそうに告げる士龍サンの肩を、バシバシと叩いてそうじゃないと首を振り、
「シロ、ちと、待って、えっと何て組」
士龍サンに優しい笑顔を向ける様子は、鬼とか悪魔とか言われている相手とは思えないくらい穏やかである。
「偵察隊は、危ねえから引き上げといてよ」
士龍サンが海東組の名前を伝えると、ハセガワはどこかに電話をしはじめる。
「……シロ、ほんとにおっきくなったなあ」
イケメンヒダカは、ちょっと士龍サンを見上げて感動したように言い募る。
昔の士龍サンか。
「イチゴみるく飲んでるからね、ヤッちゃんはすっごくカッコよくなったね」
士龍サンの表情から焦りが消えて、いつものような余裕が戻ってきていてなんとなく安心する。俺らじゃ頼りないのは分かっていたが、あまりに切羽詰っていたので、見ていて苦しかった。
俺は士龍サンの横に並ぶと、イケメンの顔を見返す。
「昔の士龍サンて、どんなんでした?小さい頃は3人で喧嘩しまわってたんすか?」
「シロは、ちっちゃくて可愛いかったな。変態に狙われてたよ、俺と一緒で。トールが俺らに喧嘩のやり方と、自衛方法を教えてくれたからさ、俺らは酷いことにはならなかったけど」
思い返すように、イケメンは口元を緩める。
「ヤッちゃんはね、ホントに可愛かったもんね」
「人のこと言えないだろ?シロは天使かと思う愛くるしさだったし」
軽く空を見上げて日高は笑いながら、士龍サンの肩を軽くたたく。
「それが、いっちょ前にヤクザさんから恋人助け出すとか、カッコイイこと言い出すし」
「カッコイイとかじゃなくて…………ホントに助けたいんだ」
そう決意を口に出す士龍サンに、日高は優しい表情で笑いかけた。
「わかってるよ、手伝うからね。…………あ、トールが戻ってきた」
ハセガワを指差し、携帯を片手に戻ってきたハセガワは快活な表情で告げた。
「シロ、場所わかったみたいだぜ!………殴り込み………いこーぜ!」
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