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虎穴虎子→sideS

トール君から作戦内容を聞いて俺はその突拍子もない計画に驚いた。 美人局作戦とか言ったが、そんなに練られたものではない。 基本的には突っ込むのには違いないのだが。 大まかにいえば、日高が女装をしてみかじめ料とかを払う振りをして、ドアが開いた瞬間に乗り込む寸法である。 いくら顔が綺麗でも、そんなに簡単に騙されないだろうとは思うが、日高は女装には自信あるらしい。 ちょっと待ってね、着替えてくると言って日高はトール君の家のお店に向かっていった。 「ヤスの女装はさあ、マジですんげえ可愛いぞ」 トール君は目尻を下げて俺に説明するが、惚気にしか聞こえない。 「ぞろぞろ行くのは目立ちすぎだからな、俺とヤスとシロとソイツとアイツだけでいくぜ」 トール君は、周りの奴らを見まわして、直哉と元宮を指差し指名する。 武闘派の元宮は分かるが、直哉はそれほど武闘派じゃないので不思議に思うと、 「んー、そんな強そうじゃねえけどさ、その子は、シロの懐刀だろ?」 と何の迷いもなく言われて、2年の中では1番頼りにしていることがなぜ分かるのかが不思議だった。 「流石に5人じゃ厳しいんじゃないかな?」 思わず不安になりながら問いかけると、トール君は何でといった表情を浮かべる。 「ヤクザ相手に、5人だよ?」 「大丈夫だ。俺のダチのセージの情報だと、そこの組は末端の方で総勢30人しかいないからな。俺が大体20人は倒すから、ヤスとシロで3人づつ、あとは、2人づつでオッケーだ」 トール君は、指折り数えるがなんだか数の配分がおかしい気がする。 20人倒すとか簡単に言うけど、筋の人たちだ。 いくらなんでも、それは無理だろう。 しばらくして、背の高い長い黒髪の綺麗な水商売っぽい服を着た女性がゆっくりと俺らの方に歩み寄ってくる。 「うわ、綺麗だな。…………ヤス。すげえ、イイ」 トール君は、表情を緩ませて近づいて賛辞を浴びせる。 うわ、自信はあるっていってたけど、ここまで綺麗になるとは。 周りの奴らも感嘆の声をあげている。 「ヤッちゃん、スゴイね」 「メイクはトールのおふくろさんにしてもらったけどね。ヤクザ好みのイイ女メイクでオーダーした」 さらさらとした長い黒髪はウイッグなのだろう。 ちょっとラメのはいったワンピースも似合っている。 「おふくろ喜んでたろ?」 「娘にメイクするのが、夢だったって言ってた」 嬉しそうなトール君は、本当に日高を好きなんだなと傍目からもわかる。 いきなり近くに止まったバイクに周りがざわめく。 こんだけ集まっていりゃ、好奇心でヤンキーとかがやってきても不思議じゃない。 長身の男はメットを外すと、ヤンキーというより爽やかな男子高生の顔がハッキリわかる。 トール君を見ると、彼に笑顔で手を振っている。知り合いか。 彼は荷台に積んでたでかい袋を担いで近寄ってくる。 「東流、マジで東高ばっかじゃん。つか、康史、すげえ、マジで女装してるとか、びびる」 袋をトール君に手渡して、爽やかな顔をした男は臆さず俺たちを眺める。 「あ、こっちは同小だった、シロ。こっちは中学からのダチのセージ。高校は一緒で北高」 「野口誠士っす、シロ…………でいいのかな?」 野口は、俺に爽やかな笑顔を向ける。 たしか、市内でも有名なスポーツ選手だったかな。空手の全国インターホンの選手だったか、名前は聞いたことがある。 「えっと、俺は真壁士龍、シロって、昔からトール君によばれてた。シロでいいよ。セージ君は空手強いんだっけ、有名だよね。インターホンがんばってね!」 俺が手を差し出して握手をすると、セージ君はプッと吹き出しながら握手を返してくれる。 「東高の真壁って、シロのことでしょ。なに?東流とおんなじ天然ちゃん??」 「士龍さんは、いろんなとこがお散歩して抜けてるんで気にしないでください」 直哉がフォローしてくれているが、俺的にはトール君ほど配線ずれてないはずだと思う。 野口は別に俺らにびびりもしない様子なのが、本当に不思議なくらいだけど、そうでもないとダチやってられないもんな。 「ま、安心したわ。とりあえず、かちこみもいいけど東流がヤリすぎないようにストッパーしたげて。警察沙汰になったらさすがにフォロー大変だし。康史一緒だから大丈夫だと思うけどね」 受け取った袋を漁るトール君を横目に見ながら、心配そうな表情をする男は、本当にいいヤツなんだなと分かった。 「アンタは?こないの」 「あー、セージは喧嘩しない掟なんだ」 「掟かー。スポーツ選手だもんな」 「将来は警官になりてーらしいからな」 「フォローはするよ。いいタイミングで、逃走補助すっからな」 こんだけ喧嘩をしていて、トール君に警察沙汰の話をきかないのは、日高とこの野口の機転なのだなと気がつく。 5人でカチコミをすると野口に伝え、俺は最悪な時のことも考えて、他の人員の配置をして、対処について指示して回った。 一刻でも早く、アイツを俺の手に取り戻すために。

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