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虎穴虎子→sideT
目隠しは解いてもらえたが、下につけというこの事務所の頭の誘いをキッパリ断ったので、体の拘束は解いてもらえずに柱に縛り付けられている。
死んだとしても仕方が無いと諦めはつく。
だけど、進んで命惜しさにこういった卑怯モンの類の奴らとは仲間にはなりたかない。
「テメェも強情だな、東高校出身じゃ、いずれは俺たちと変わらねえ将来だろうよ」
確かに、うちの卒業生なんて就職よりチンピラになるほうが多いとは言われている。
「…………だとしても、そんときゃ自分の意思だろうよ」
誰かに強制される将来なんて真っ平だ。
たいしたメシも食わせてもらってないから、体の力も出ない。
事務所の中には約10人ちょいの柄の悪い連中が出入りしている。
逃げることも、ムリだな。
ピロロロ、ピロロロ
インターホンが鳴る甲高い音が響き、下っ端とおぼしき応対している。
「アニキ、みかじめ料払うってオンナがきたんすけど」
俺に話しかけていた男は首を横に振って、
「取り込み中だ。追い返せ」
「アニキ、でも、マジでチョー絶美人すよ!」
かなり興奮したように叫ぶ下っ端に、流石に少し興味をもったのか、頭の男はちょっと悩んでふと悪そうな顔つきになる。
「だったら、引っ張りこんで捕まえて、すぐ剥いて縛っておけ」
美人さんも飛んで火に入る夏の虫だな。
まだ冬だから、冬の虫?むかれて縛られるとか、ホントに可哀想に。
「うひょー、了解っす」
下っ端が意気揚々と扉を開けた瞬間、バンッと派手な音がして下っ端は吹っ飛ばされ部屋の中に転がった。
一瞬だけ唖然としたが、周りの男たちは慌てて出入口へと駆け出す。
入口へ群がる男たちは、次々に壁に吹っ飛ばされて叩きつけられていき喧騒と怒号が交錯する。
中に何人かの男と、長い足を振り上げて男たちを蹴散らす長い黒髪の美女が、何人かの男を引き連れて中になだれ込んできた。
「……え……士龍…………」
オレの目に飛び込んできたのは、今生もう会えないと諦めた人の顔で、視線が絡み合う。
士龍の後から元宮とハセガワと木崎が、男たちを殴りつけながら押し入ってきたのが分かった。
ハセガワは、ヤクザ相手にまるで赤子の腕をひねるような容易さで次々にぶちのめしていく。
「たけお、たけお!!」
必死な形相でオレを見返して、士龍が目の前の男をぶちのめして、オレの方に駆け寄ってこようとしている。
あ、あいたかった。
あいたかった。
「テメェのダチか!」
「そうだよ!!」
返事をすると、男は懐から取り出した銃をオレに向けた。
ああ、やっと…………士龍に、会えたのに……。
「じゃあ、死ね」
助けにきて、くれたのに…………士龍…………。
父親にも見捨てられたオレを…………。
引き金を引く金属音に、オレは死を覚悟した。
「…………たけお!!」
瞬間、オレを抱き締めるように覆いかぶさる体の重みを感じた。目を見開くと視界の上に、微笑む士龍の表情が入ってくる。
ガウン、ガウン!!ガウン!
直後、冷たく響き渡った銃声に、オレは悲鳴をあげた。
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