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塞翁之馬→sideS
虎王が撃たれると認識した瞬間、俺の身体は走り出し、柱を支えにして虎王に覆い被さる。
ああ…………やっと、また、会えた。
嗅いだ匂いと嬉しさに顔が綻んでしまう。
火薬の匂いと耳に轟く銃声、背中にうちつけられた衝撃に、肺の当たりが痛み、途端にかはっと赤い汁が唇から溢れる。
「イヤ、イヤダァ…………ッシロ、ウ、シロウッ!!!」
ふくらはぎの辺りにも痛烈な痛みが走り、俺は虎王の肩を掴んで身体を沈まないように支える。
取り乱したたけおの声が、かなり悲痛に響いて耳に聞こえる。
虎王は怪我してねえみたいだ。撃たれた背中がジンジン痛い。
撃たれた足からは、血がだくだく流れて止まらない。
背後でトール君が、撃った男をぎたぎたに殴っている激しい音がする。
もう、大丈夫だ。たけお。
そう言いたかったが、苦痛に目が霞んでしまう。
「士龍…………、血が…………士龍が、しんじまうッ」
ん、な、泣きそうなツラすんじゃねーよ。
「…………しなね、えから」
虎王の背中で拘束している鎖を引きちぎる。
せっかく会えたのに、死んでたまるかっての。
虎王は、必死の形相で俺を抱き締め返す。
「にげ、るぞ」
撃たれた衝撃で、背中の筋肉がちっとやられたようで全身の力が抜けてるらしく、フラフラしちまう。
「シロ、大丈夫か。あんま突っ込むなって、防弾チョッキきてても、頭と下半身は防弾じゃねーからさ。足うごけっか?」
トール君の友達の野口は、ヤクザにかちこむなら必需品といって防弾チョッキを5着調達してくれたのだ。
おかげで、背中のはチョッキに弾がくい込んだだけのようだ。
唇からこぼれた血液をシャツで拭うと、大丈夫だと呆然としている虎王に告げる。
「でも、脚やられた……あるけなそ」
「あ、こないだ報復にきたヤツか。シロの恋人だったのな、捕まってたとこ悪いけど、シロを立たせてやって」
トール君は、虎王を覚えていたのか、ちょっとだけ眉を寄せたが、銃を向けたおっさんをふんじばって転がす。
「ヤス、そっちは大丈夫か?」
「ヤクザにしては弱いね」
「だな、カツラとれてるぞ」
笑いながら、日高は飛んだウィッグを片手に転がった男たちを手際よく縛り始める。
虎王は俺を抱き起こしながら、小刻みに身体を震わせて俺を見上げる。
「…………士龍。脚、スゲー血が出てる」
「大丈夫。んな、ツラすんなよ。…………思ったより元気そうで良かった」
赤い髪をわしゃわしゃすると、虎王は複雑そうに俺を見上げた。
「おふたりさん、感動の再会はまた後でやンなよ。とりあえず、逃げるぞ。ケーサツくるから」
トール君は、非常口を開けると指を向けて日高の腕を引いて出て行った。
俺は、虎王に支えられながら、非常口を出てまだわけがわからない表情をしている彼の背中を軽くたたいた。
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