3 / 101
夏虫疑氷→sideT
教室へ戻ろうとすると、扉の前に同学年の木崎直哉が仁王立ちで立ち塞がっている。
ヤツは盲目的に真壁を崇拝しているので、最初は気があったが、最近じゃかなり反目しあっている。
つかつかとオレに近寄り、木崎はグイッ胸ぐらを掴みあげてくる。
「栗原さんから、オマエらが抜けたって聞いた」
「ああ、そうだ。何か?」
ギリッとオレを睨みつける相手に、オレはため息をもらす。
「オマエら、うちと敵対するつもりか?」
冷静な口調をこころがけているつもりだろうが、声の端々は苛立ちと怒りに満ち溢れている。
「さあな。真壁さんのトコにいても、テッペンとれねーなら自分でとるっきゃないでしょ。出てくのはそれだけの理由だ」
「世話になった、士龍さんが居ない時にワザワザ出てくのは、喧嘩売ってるってことだろ。出てくなら俺が相手になる」
「やめとけ、木崎。オマエはオレに勝てないし、オマエを潰したらそれこそ真壁さんにケンカを売ることになる」
世話には、なったかもしれない。
まあ、こっちが喧嘩に巻き込まれたときは、すぐに加勢にきてくれる。本当に頼りになる人だった。
だけど、それだけだ。
オレはもっと野心のある人を上に担ぎたい。
それがいないなら、オレがそれになる。それだけだ。
「そう思われても仕方がねーけど。仮に居たとして同じことを言ったとしても、オレは真壁さんが引き止める人だとは思えないけどな」
オレが知ってる真壁士龍という男は、仲間を大事にしてはいるが、それを頼りにはしていない。
人数が増えようと減ろうとまったく気にはしない。
己のチカラだけで全て解決しようとする、ワンマンなヤツである。
「木崎、オマエもわかるだろ?」
何時も余裕そうにかまえていて、何一つ大変な顔すらせずに片付ける。おんきせがましくもなく、野心すらまったくない。
憧れはする。
圧倒的な強さの下、安心感はある。
だけど、それじゃ足りない。
オレの中にある、ふつふつと煮えたぎる感情は、それじゃ足りないとばかりいっている。
それを掴み取るためにも、オレは真壁さんの庇護下にいることをよしとはできなかった。
木崎は俺の上着から手を外すと、勝手にしろっと捨てゼリフを吐いて、別の教室へと向かって歩いていった。
ともだちにシェアしよう!

