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六月十九日―教会②

 もう一秒だって待てない。  もし違う出逢い方をしていたなら――  もっと周りに祝福される事も出来たのだろう。  「御目度当う」と云われる事が歯痒くとも、自慢気に。選んだ相手は素敵なのだと、周りの誰から見ても明らかに出来るように。  ――其れにはほんの少しの自慢も含まれる。 「楽に死なせてやる心算は無ェ」 「文字通り、殺し文句だねえ」  参列者が一人も居ない教会で、誓い合い唇を重ねた。其れは本当に一瞬。中也が太宰の身長に合わせる事が困難だった為。  握り合う手許の指輪が月明かりに反射して輝きを増した。 「今此の瞬間に死ねたら一番幸せなのに」 「五月蝿ェんだよ死にたがり」 翌日、身を粉にして働き一週間の長期休暇を獲得した中也の居ないポートマフィアの首領、森鴎外の元に 『結婚しました』 と文字以外の何も書かれて居ない葉書が送り届けられた。

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