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目が覚めたら……。

真っ先に頭に過ったのは素直に両親の事だった。とくに母親だった。母さんは俺が死んだらきっと泣くだろうな。 それに親父だ。兄貴はどうだろう――。 兄貴とはいつも、些細なことでケンカばかりしてたからな。俺が死んでも兄貴は清々するか……。  友人はどうだろうか? 俺が死んだら、泣いてくれる友人はいるのだろうか?  みんな驚くだろうな。俺がこんな山奥で、顔も知らない相手に殺されて、バラバラ死体になって埋められたら。それでも誰かが、自分をみつけてくれるだろうか。  絶望の淵に立たされた俺は、恐怖の中でそんなことが脳裏に過ると、言葉を失って悲観した未来を描いた。   ――生きたい。  でも、あいつに何をされるかわからない。  そんな絶望的な考えも、頭の中に過る。  嫌だ、死にたくない! 死にたくない!   俺は生きたい!  生きて家族のもとに帰りたい!  生きて友達に会いたい!  俺は…――! 「ッ……」  その瞬間、様々な思いが脳裏に駆け巡ると両目から涙が溢れ落ちた。これが人の生への執着だと言うのか。俺は生きたい気持ちの方が死よりも、強まってしまった。そして気がついたら無意識に頭の上に置いてあったペットボトルに口をつけて飲んでしまった。 もう気づいた時には既に遅かった。それを飲んでたった僅か数秒で意識を失った。それはまるで『死の口づけ』のような味だった。これから起きる未来の絶望を予感させるようなそんな始まりに過ぎなかった。 この時の選択肢がのちに俺自身を後悔させられるとは思いも知らずに――。   

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