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克哉

 警察官の態度を見て感情的になると、声を荒らげた。 「だからさっきから何度も同じ事を言ってるじゃないですか!? うちの弟が急にいなくなったんです! いなくなって6日が過ぎました! いくら探しても全然見つかりません! それどころか、携帯に連絡しても留守番電話になるし、メールを送っても全く返信もないです! 弟が家に帰って来た形跡すらないんです。ついでに大学も行って無く、バイト先からも弟が来てないと職場から、連絡がありました。うちの弟は黙っていなくなるようなそんなヤツじゃありません…――! きっと何か、大きな『事件』に巻き込まれたに違いありません! 我々の力じゃどうにもなりません! どうか今すぐ弟を見つけて下さい……!」 克哉は窓口にいた警察官に事情を話すと、直ぐに捜索願いを出した。窓口にいた警察官は話を聞きながらもとりあう様子もなく。ボールペンで頭をかきながら紙にメモをした。 「そ―ですね、これは恐らくただの家出ですよ。そのうち弟さんもフラッと帰ってくるでしょう。何も事を騒ぎ立てる程でもないですよ。ほら、若い子にはよくある傾向なんですよねぇ。弟さんもきっと『それ』ですよ、それ。まあ心配する事でもないと思いますが――」 『なっ、なんだと……!?』  警察官のその話に頭の中がカッとなった。 「確か弟さんの捜索願いでしたっけ? そうですねぇ、一週間しても帰って来なかったらまた署に来て下さい。 その時は我々も弟さんの捜索に当たりますので」 「いっ、一週間……!? アンタはそれでも我々、市民の安全を守る警察官か! 一週間経ってから捜索しても遅いんですよっ!? 早くうちの弟を探して下さい!!」 「まーまー、宮下さん落ち着いて下さい。確かに焦る気持ちもわかりますが、この場合もっと冷静になられた方がよろしいかと思いますよ?」  警察官の何気ない言葉に、克哉はカッとなると今にも殴りかかりそうな雰囲気を漂わせていた。

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