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黒い感情

 冷たい雨が降る中、あの子の葬儀がしめやかに行われた。悲しみに沈んだ私の前に、あいつらは平気な顔して現れた。そして、嘲笑っていた。 あの子がこの世に、もういないのに。何であいつらは平気な顔して生きているんだ? そう思った瞬間、黒い感情の芽は私の中で一気に張り巡らして根をつけた。それは『復讐』と言う名の黒い華だった。 笑っていたあいつらを見て無性に腹が立ってくると、持っていた数珠の輪を引き契ってその場から去った。  フツフツと沸き上がる感情のその先に辿り着いたのは、一つの思いだった。 ――そうだ『復讐』を始めよう。  そう思った時には既に人間らしさも、道徳心も捨てて、神にさえも背中を背けた。そして、私は密かに復讐の準備を始めた。  

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