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ひび割れた記憶
――兄貴とは5つも年が離れている。だから兄貴がどんな学生時代を送っていたかもわからない。
それに兄貴とは普段からあまり喋らなかった。いや、向こうがいつも壁を作っていたような気がした。それに、趣味もバラバラだった。兄貴との共通点なんて最初から一つも無かった。
勉強も普通に出来て、俺より頭が良かったし。何より成績も優秀だった。俺達は『兄弟』なのに、仲が悪い。他の家庭では、よく兄弟喧嘩をしてる家もあれば、喧嘩もせずに仲良くしている兄弟もいるみたいだ。俺は小さい頃から、それがすごく羨ましかった。
どこにでもあるような在り来たりな光景なのに、その仲の良い兄弟を見ると、いつも心は嫉妬していた――。
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