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─輪─

「良かったねぇ、これで安心だね慶ちゃん。『トモダチ』の俺に感謝しろよ?」 「ッ…――!?」  白い封筒を手にすると分厚いお札の感覚を手の中で感じた。そのお金は今の俺には『必要』な金だった。 これさえあれば問題は全てクリア出来た。だが、それと同時に頭の中で葛藤する自分がいた。その金を受け取りたい自分とそれを受けとってはいけない自分。2つの葛藤が、頭の中でせめぎ合った。そして俺は現実の前で体を小刻みに震わせて呼吸を荒くさせた。  手に取った封筒の中身を恐る恐る覗き込んだ。確かに中には大金が入っていた。それを目にすると思わず驚いて、心の声が漏れた。 「こ、こんなに……!?」  その言葉に真樹はニッと笑った。俺はあいつの笑みに一瞬、ゾッと寒気を感じた。 「あっ、あの時……! あの時お前達と一回遊んだダケだろ!? 確かにお前と遊んだらお金をくれるって聞いたけど、さすがにこれは……! そっ、それに…――!」 「それに何だよ?  また、振り出しに戻るか? いいから黙って受け取れよ。それとも受け取らないで帰るか? 俺は別にいいぜ。でも、困るのはお前の方だけどな……」 あいつはそう言って俺の心を、端から見透かしてきた。その言葉に自分の中で葛藤がついにピークに達した。その時、俺は封筒を受け取らないと言う選択よりも、あいつから封筒を受け取る選択を選んでしまった。それがのちに、自分を苦しめる事とは知らずに――。  

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