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─輪─
「あ、じゃあ こうしようか。その金は遊んでくれた分と困ってるお友逹を助けてあげる為の金だ。そしたら受け取りやすいだろ?」
「お前…――!」
「ほら、早く受け取れ。俺の気が変わらないうちにな」
真樹はそう言って、白い封筒を強引に握らせてきた。手に持った封筒をジッと見つめると、つい口走った。
「なあ、一つ聞いてもいいか……?」
「あ?」
「この金……! あいつが居なくなったことに関係して無いよな…――!?」
震えた声でその言葉を口にした途端、あいつは無表情で俺のことをジッと見てきた。その視線に一瞬ギクッと顔が強ばった。そして、笑いながら肩を小突いてきた。俺はあいつの前でその言葉を口走ると冷や汗と緊張がピークに達した。
「なに言っちゃってるのお前、大丈夫? いきなり変なこと言うんじゃねーよ。さっさとそれしまえよ。一目につくだろ?」
真樹はそう言って白い封筒を取り上げると、そのまま俺の着ているジャケットの内ポケットに無理やり封筒を押し込んできた。あいつはケラケラと笑っていたけど、俺は全然笑えなかった。だから顔面蒼白になって口元が震えた。
「あー、そうそう。お前に一つ言っておく。あの時の夜の事は言わない『約束』だったろ? お前を助けてやる代わりに聞かない約束だったの覚えてるか? まさか、忘れたワケじゃないよな? それが条件だったろ。今さらあの時の事を忘れたなんて言わせないからな、俺も『助けて』やったんだ。お前も約束を守れよ――」
真樹のその言葉に驚くと、唖然となって身体が固まった。そしてゴクッと息を呑んだ。もうそれ以上、聞くのも知るのも怖かった。目に見えない何かが俺を黙らせた。もうこれ以上、関わりたくない俺はあいつのその言葉に一言『わかった』と返事をしてしまった。
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