142 / 217

─見返り─

相変わらずドアの前に行くと、左足が鎖で引っ張られる。だからベッドを少しづつ動かして距離を縮めた。あいつは俺がベッドを少し動かしていることに気づいていない様子だった。 ドアの前に立つと試しにドアノブを回してみた。だが、相変わらず鍵が外側からかけられていた。そこで深いため息が自然に漏れた。 「っ、のやろぉ……!」  ドアが開かないなら次は両手で叩いてみた。力いっぱい叩いてみたがびくともしなかった。それ所か両手が痛くなってきた。そして、最終手段でドアに思いっきり体当たりした。だが、どんなに体当たりしてもドアが壊れる事はなかった。 「ハァハァ……! くそっ、ちくしょう! 一体、どうなってやがる…――!?」  叩いて体当たりしてもドアはびくともしない。まるで固い鉄の扉だ。このドアさえ壊せば、俺は此処から逃げれるのに。そう思うと、もどかしい気持ちになってくる。 『ナギ』とか言うイカれた奴に急に拉致られて、監禁されてから俺の人生は全部メチャクチャだ。早く此処から脱出しないとと、自分自身に何回も言い聞かせた。だが、なかなか上手くいかない。 それに今が何日過ぎてるかもわからない状態だ。部屋にカレンダーも無ければ、時計すらもない。何もない空間にいつまでもいると、頭がおかしくなるのも事実だ。  俺はこの空間に、一人 閉じ込められたままだ。いつか本気でおかしくなる。今は、その途中なのかも知れない。 「ああ、くそ! ちくしょう、とにかく考えろ! どうしたらいいのか考えろ…――!」 自分の頭を両手で抱え込むと、そこで必死に冷静になろうと努力した。そして、自分の中で気持ちを落ち着かせると頭が少し冴えてきた気がした。 そもそもこの部屋にはドアが1つしかない。ついでに窓は鉄格子と分厚い板で塞がれていた。力で外そうとしても無理だった。かといってシャワールームはコンクリートの壁に覆われていて、何処にも穴なんてものは見当たらない状態だった。 それに天井も同じく塞がれていて、天井裏なんてものも見あたらない。まさに完全なる、密室状態だった。だから俺は冴えた頭で色々考えた。自分の爪を噛んで、ありとあらゆる角度で物事を冷静に考えた。きっと何処かに、盲点があるはずだ。そう、俺はそこにかけることにした。 「ちくしょう、こんな所でくたばって溜まるか! 俺は絶対、家に帰ってやる…――!」  その言葉を口にすると僅かに勇気が湧いた。  

ともだちにシェアしよう!