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【第17話】―現在―(克哉side)

――会社に事情を話して休みを貰い、一次的に実家に戻ってから暫く経った頃、俺は自力で弟の捜索を続けた。 父親と友人の秋元と一緒に街の中でビラを配っては通行人に何度も同じ事を尋ねたり聞いたりと、無情にも同じ事の繰り返しの日々を送っていた。  それなのに何一つも手がかりが掴めなかった。さすがに3週間以上も過ぎた。そろそろ警察が動いてもおかしくない。いや、むしろ遅すぎだ。もう一度あの警察署を訪れるべきか……。 いや、あいつらは使えない様な連中だ。前に門前払いされた時の態度を見てわかる。事件だと確信を裏付ける証拠がない限り、あいつらはまともに動かない。 「クソッ…! 悠真…――!」  こんな事をしている間に時間がドンドン過ぎて行く。悠真が何処かで『無事』に生きている事を今は願うしかない。  兄としての無力さに正直、気持ちが押し潰されそうになる。家では相変わらず母親がショックの余りに、ベッドで寝込んだままだった。父も母の看病に追われて最近では頬が窶れてきた。 ――その日は日頃の疲労で死んだように朝から眠るとベッドの中で1日中過ごした。外から聞こえる雨音が頭の中を静かにかき乱した。ここずっと、天気が悪い日が続いている。どんよりとした曇り空と雨で気持ちの中も晴れなかった。  何もしなくても寝ても考え込んでるだけでも、お腹だけは空いてきた。ここずっとまともに食事を食べてなかったから、珍しく空腹に気持ち悪くなって目が覚めた。疲れた体を起こすと、ベッドから立ち上がるなり自分の部屋を出た。  二階の廊下を歩く途中で悠真の部屋を覗いた。部屋の中は、そのままの状態だった。悠真が居た生活感が残っていた。  数年前まだ仲が悪かった頃はアイツの部屋には滅多に入らなかった。壁には人気のロックバンドのポスターと赤いギターが飾られていた。そこで不意に遠い記憶を思い出した。  

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