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屈辱と……
「お手、おすわり、待て。キミにはどうやら躾が足りないようだ。まだわかってないようだな……。キミは私を殺すと言うがそれはいつだ? 私ならいつでもキミを殺せる。それがキミにはわかっていないようだ。ほら、こんな風に爪を立てられたら痛いだろ。だから私の言うことを聞け。お前は私に飼われている可愛い子犬だが、その狂犬ぶりが私は気に入らないんだよ。この背中の肉を爪で抉ったらキミはどんな風に『壊れる』のか、見て見たいよ――」
『あぐっ!! ぐぁああああああああっっ!!』
悠真は焼き印を押された場所に爪を立てられると口からヨダレを垂らしながら痛みに喘いだ。その彼の苦痛に顔を歪める姿を、男は仮面の下に冷酷な表情を隠して、上から見下ろしながら爪を深く立てた。
「この背中の肉を一層、削ぎ落とせば。私の言うことを大人しく聞くのか? お前の苦痛に悶える声すら、私には甘美な喘ぎにすら聞こえてくる。悠真は誰に渡さない。私だけのものにするんだ。そして、この牢獄さえもエデンの園にしたら何て素敵なんだろうねぇ…――」
男は仮面の下で歪んだ狂気をチラつかせた。イカれた男と一緒にいるのは悠真の精神をさらに追いつめた。背中を痛めつけられて、狂気染みた話を聞かされると彼はそこで小刻みに笑い出した。
「くくくっ…あははははっ! とんだイカれた野郎だぜ。一人で夢(ドリーム)語って、頭の中沸いてんじゃねーよ。だれがテメェなんかに屈するかよ。残念だったな。お前のイカれた『楽園』なんか、死んでもお断りだ。テメェは一人で一生マスでもかいてろ……!」
悠真はそう言って小刻みに笑うと、まだ強気な態度をとったのだった。その言葉に仮面の男は、彼の頭の毛を鷲掴みにすると後ろで笑い返した。
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