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支配者

「ほら、悠真。痛め止めだ。今度は飲んでくれるね?」  仮面の男はそう言って痛み止めと、水が入ったコップを手渡した。だが、差し出されたコップを受けとることはなかった。  悠真はベッドに横たわったまま、ピクリとも動かなかった。それどころか無反応だった。ただ、ジッと目はどこかを見ていた。  完全に飲む気力もない様子を見て、男はそこで自ら薬と水を飲むと悠真の体を仰向けにさせた。そして、彼の視界を左手で覆い隠すと顔に付けていた仮面を外した。そして、そのまま口移しで薬を飲ませた。  無抵抗な状態で薬を飲まされると体が一瞬反応した。そしてその薬を反射的に飲んでしまった。悠真はそのまま、無気力な状態で天井を見つめていた。外した仮面を再びつけると男はベッドから離れた。食べ終わった食事を下げると、ワゴンを押して扉の前に立った。 「おやすみ悠真。ベッドで大人しく良い子で寝てるんだよ。そうそう、私の事は『ナギ』って呼んでいいよ?」 「…………」 「じゃあ、おやすみ。明日は私は忙しいからね。朝からやる事があるから大変だ。だから悠真には大人しくして貰えると助かるよ」 仮面の男は自らの名を『ナギ』と名乗った。悠真は、無反応なまま返事をしなかった。そして体を横にして男に背中を向けたのだった。 薬を飲んだから直ぐに効き目が出てきた。背中と頭の痛みが和らいだ。そして、それと同時に頭の中が段々とぼんやりとしてきた。瞼が重くなると急に眠気がしてきた。意識が薄れて行く間際に、虚ろな瞳で一言呟いた。 「」  悠真はそこで相手に向かって『獣』と呟いた。だが、仮面の男は聞いてない様子で扉を閉めると外側から鍵を閉めたのだった。 捕まえた鳥を檻の中で飼い、自分だけの物にする強い独占欲。それが相手の自由を奪い取り、飼い殺しているとも気づかずに――。   

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