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─見返り─

猛烈な吐き気に胃袋の中身も空っぽになり、そのまま力尽きて洗面台の下に膝をついたままの状態で倒れた。 『ああっ、クソッ、クソッ、畜生…――!』  見返りを求める代りに無様に犬に成り下がってバカな事をした自分に苛立ちと嫌悪感とストレスを感じづにはいられなかった。そして、精神的にも追い込まれると吐き気を我慢出来ずに床の上に吐いた。 フラフラになりながら床から立ち上がると、口の中が最悪な状態に我慢出来ず。そのまま無我夢中で歯ブラシを取るとその場で一心不乱に歯磨きをした。  何かが壊れたのか、それとも既に壊れたのか、自分の中で少しづつ、精神的なものがボロボロと鈍く剥がれ落ちるような気がしてきた。それは僅かにだが、心の中で軋むように広がっていった。  最高に疲れて、しんどくなって、もうダメだと、心が悲鳴を上げるとその場から離れて、ベッドの方に戻るなりうつ伏せで倒れ込んだ。そして暫く無言のまま瞳を閉じて考え込んだ。 「――っ、れば出きるじゃねーか、はははっ……。安易い簡単だったな。プライドなんざ、ホントに意味ねーな。これで結果オーライだろ? あとはアイツが俺の欲しいものを持ってくれば……!」 俺はアイツにテレビかラジオを頼んだ。そして、その見返りに俺は自分のプライドを押し殺して。アイツの前で屈辱的な姿を曝して犬みたいに成り下がった。  ただそれだけの事だ。ここではプライドさえも意味も持た無い事を思い知ると、そのまま精神的に疲れ果て、沈むように眠りについた。  

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