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―彼女―

「橘って暗ぁ……。 どうしていつもそんな顔してるんだ?」  隣の席にいた彼に突然そんな事を言われて私は驚いた。そう言って窓辺の席で頬杖をついて人の顔をジロジロと見てきた。私はその時、胸の中で思った。 『どうして貴方にそんな事を言われなきゃ、いけないのよ!』 ……って、その時は一瞬、彼に思った。でも、直ぐに言い返せなかった。だって彼が私に言ったのは本当の事だった。 三つ編みに眼鏡なんて絶望的過ぎる。それに着ている服も地道だった。ださくてイケてない格好を当時の私はしていた。 ファッションやオシャレにも疎くて、同じクラスの女子の中では、私だけ浮いていた存在だった。それに人見知りで口下手で恥ずかしがり屋だったので、自分が人前で目立つのは大の苦手だった。 そんな性格だから女子の友達は少なかった。男子の友達は0に等しい。私はクラスの中で暗いような、いわゆる『陰キャ』な女子だった――。  

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