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―彼女―

「ふぅ……」 大学の庭にある木の下のベンチで、彼女は一人でいた。紙パックのジュースを一口飲むと浮かない顔でぼんやりと考えいた。 あたしったらあの時、失礼な事しちゃったかな?  せめて声を掛ければ良かった。なのに自分から走って逃げるなんて最悪だよ。  悠真君のお兄さんびっくりしただろうなぁ……。  別に冷やかしで彼の家を見に行った訳じゃないけど、あの時。偶然に帰り道で見かけてちょっとだけ様子を見に、彼の後をコッソリついて行ったけど。なかなか話しかけるタイミングがなくて、黙って見てたら、後ろを振り返ったからビックリしちゃった。でも、あの時は。声をかけれそうな雰囲気じゃなかったし。それに何だが、悲しそうだったなぁ……。  その前も雨の中走って逃げちゃったし、あたしったら本当に印象最悪。きっと不自然に思われたかも…――。    あがり症の癖、全然治らないなぁ。昔よりかは少し良くなったと思ったんだけど。自分では結構努力したはずなんだけどな。昔の冴えない自分とは、大分変わったと思ったのに。人ってなかなか上手く行かないな……。 ここに入って彼と偶然もう一度出会えて、あの時の自分よりか自信が持てた気がしたけど。結局、彼とは昔の『友達』のままだし。ホントにあたし何やってるんだろう……。 小学生の時も同じ中学校の時も今も全然変わってないのはあたしの気持ちが臆病なだけだ。もう少し前に踏み出せる勇気があったら、あの時。彼に言えなかった思いを伝えることが出来るのかな。  悠真君、あたしの事どう思ってるんだろ。彼の気持ちが聞けたらいいのに。あれからずっと大学に来てないし、家にも帰ってないって聞いたし、何だか心配だなぁ。本当に何処に行っちゃったんだろ?  彼に会いたい。  会って一番に声が聞きたい――。  

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