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【第19話】―蜘蛛の罠―

ジャスが流れる喫茶店に、1人の若い女性が店の中に入った。大きな黒いサングラスに、長い金髪のストレートヘアで、短いスカートに大胆に脚を見せた魅力的な格好で現れる。  赤いハイヒールの音を立てながら、奥の窓側の席に近寄ると其処で後ろから声を掛けてテーブルに座った。 「お待たせ、準備はできたわ。そっちはどう?」 金髪の女性は椅子に座ると、目の前のテーブルに座っている男性に話し掛ける。彼は彼女を見て、静かに笑う。 「久しぶり。あれから元気そうじゃないか、どうだい。気持ちは固まったかい?」 「そっちの方こそどうなの? 本当に『叶えて』くれるんでしょうね。私が貴方の手を取った時に言った言葉。あれは嘘じゃないわよね?」 「ああ、もちろんさ。私は嘘はつかないよ?」 彼はクスッと笑うと彼女の顔を見て、妖艷な笑みを浮かべる。彼女の目の前にいたのは、あの時に出会った銀髪の青年だった。ナギは冷たい瞳と顔をしながら淡々と話す。 「君が思っているよりも、私はこの瞬間をずっと待ち焦がれていた。君には分かるか? かけがえの無い大切な物を『失う』恐怖が。私はただ叶えたいんだ。たった一つの望みを。君こそしてくれるんだろ。このには君の力が必要だ」  そう言って彼女の顔に触れた。 「ええ、するわ。その為にこの数ヶ月間。色々と『準備』してきたんですもの。私が今生きているのは全部この為よ。あいつらに分からせてやる。私が受けた苦痛と苦しみがどれ程だったか――!」  彼女はそう言って、机の下で拳を握って身体を震わせた。胸の奥から湧き起こる怒りを、グッと堪える。 相手の揺るがない気持ちを聞き受けいると、ナギは白いコーヒーカップを手に持ち。一口飲むと静かに返事をした。 「いいだろう。さあ、今からゲームを始めようか?」  

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