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【第19話】―蜘蛛の罠―

――シンと静まる部屋の中で、退屈そうに風呂場で湯船の中に浸かる。何もする事が無いからぼーっと考えた。  頭の中で空想を働かす。そうする事で現実逃避をしながら、物思いにふけた。  今頃、みんなどうしてるだろうな? 父さんや母さんや、兄貴やリンも元気にしているかな。ああ、仲間のアイツらにも会いたい……。 其処で考えると急に虚しくなった。ふと溜め息をつくと湯船から上がり風呂を出る。バスタオルで身体を拭きながら背中の痛みを感じた。あの時、アイツに背中に押さた焼印の跡が疼く。まだ完治してないだけにあって、時たま皮膚の表面が痒くなる。 「ああ、クソっ! あの野郎、俺にふざけた真似しやがって! こんな跡を背中に残すとか、頭がイかれてるんじゃないか!? 誰が『奴隷』だ、誰がっ!!」 怒りを口にしながら独り言を呟く。思い出すだけでも、腸が煮えくり返る。俺をいきなり拉致して監禁して、自分の戯言ばかり吐いて、くだらない妄想ばかり言って、しまいには人を奴隷扱いして背中に焼印を押し付けたレイプ魔のイカレ野郎が――! 相手の事を考えるだけでも、怒りがドンドン湧く。あの男は暫く帰って来ないと言った。一体、何処で何をしているのか? そもそも正体すら分からない。あの男が今いないのなら、これは俺にとって逃げる大チャンスだ。どうにかアイツが帰ってくるまでに此処から脱出するんだ。きっとこのまま待っても助けには誰も来ない――。  

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