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【第19話】―蜘蛛の罠―

「プッ、ウケる。すげー焦ってるじゃん。つまり悠真の話しは軽々しくするなって意味か? そうじゃなきゃ、そんなに必死にならねーもんなぁ。それで俺に会いにワザワザ来たのか?」  其処で龍騎はニヤリと、笑うとジャケットからタバコを取り出し、口に一本咥えると相手の前で吸う。 「ははーん。あーなるほど、つまりはそうか……。お前あいつの『失踪』について、何か知っているだろ? いや、正しく言えばか?」 「はぁ?」 「まあ、いいや。アイツとお前の間に何かあったにせよ俺には関係ない。そうだろ?」  ニヤッと笑いながら話すと吸いかけのタバコを地面に落として靴で踏む。龍騎は何かを確信した顔で真樹に一言話して肩を叩く。 「あの時、お前に貰った金のが忘れられなくてさぁ。一回遊んであの額は無いだろ、確かに俺は金に困ってたけど天野ほどじゃない。それにただ遊ぶ金が欲しかっただけだ。それでお前の誘いにたまたま乗っただけ。意味が分かるか?」 「……」 「お前確か今、金の羽振りが良いんだったよな。こないだ食堂で俺等の前で話してたのを覚えてるぜ?」 「ああ、そうたかもな?」 「あんな額をお前のバイト代だけで稼げるわけがない。どうせ裏には羽振りが良い『パトロン』がついてるんだろ。だったら話しは早い、こないだ貰った額の倍を俺に渡せ。そうしたら今まで通りにおいてやるよ。でも、それは金次第だ。分かるだろ?」 「妄想も行き過ぎるとただの危ない奴だな。何だパトロンって? あれは俺がギャンブルで稼いだ金だ。裏に何も居るわけねーだろ、悠真が勝手に消えただけだ。俺が知るわけねぇだ。いい加減にしろよ龍騎、出ないと後悔するぜ?」 真樹はそう言って睨むと、肩に乗せてきた相手の手を払う。 「これだけは言っておいてやる。お前が変にコレに関わるなら後で必ず後悔するからな。分かったか――?」  そう言って顔を近づけると相手の耳元で囁く。そして真樹はそのまま龍騎の前から立ち去る。  

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