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お隣りのツワブキさん⑦
午後8時、茉莉ちゃんは拓海の膝に抱きつきながら駄々をこね始めた。これは睡魔が襲ってきた証拠らしい。
「ちょっとまーちゃん寝かせてくるね。」
「あ…はい。」
拓海は食器の片付けを中断して茉莉ちゃんを抱えて寝室へ入った。智裕はチラリとシンクの方を見て、腰を上げた。
両親共働きという家庭環境下、松田家の兄弟は一通りの家事をこなせる。(クオリティーは2の次)
拓海が戻ってくるまでには、食器の水切り棚に洗った皿を全て収めた。
30分ほど経過して、拓海がダイニングに戻ってきた。
「あ、皿洗ってくれたんだ。」
「あー、はい……。」
「ありがとう、助かったよ。」
「いえ!ご飯美味かったですし、これくらい家でもやってるんで。」
「そうなの?」
「そうなんです……。」
「そっか。じゃあ俺はお風呂に入ろうかな。」
「はい、ごゆっくり。」
拓海は脱衣所のドアを閉めた。智裕はしばらくドアを眺めるが、すぐにリビングのソファにちょこんと座った。
部屋の隅に置いた荷物、その上に適当に置いていたスマホが光っている。
通信アプリを開くと、何件も新着している。ひとつは家族から、「きちんとお手伝いしなさい」とまるで小学生に言い聞かせるような釘。
そして学校のクラスのグループ通信だった。
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