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マツダ兄弟戦争勃発①
「なんでこっちを買ってきたんだよ!バカかお前!小5にもなって買い物もロクに出来ねーのか⁉︎」
「うるせーよ!パシられてやってんだから感謝しろよな!俺はこっちが食べたい!いや、こっちしか愛せねーんだ!」
「ふざけんな!出したの俺の小遣いからだろ!出資者の言うことききやがれ!」
「はぁ⁉︎ちょっと表に出ろやゴルァ!」
「上等だゴルァ!」
まだ少しだけ強い風が吹く団地の10階廊下で、長身の男子高校生と伸び盛りの小学生男子が一触即発状態だった。西部劇であれば決闘の場面のようなものだった。
「あんた達、何してんのよ。さっさと中に入りな。」
「かーちゃん
は黙ってろ!」
「オフクロ
上下グレーのスウェットを着ている松田家の長男、智裕 。
三本ラインの半丈ジャージと紺色迷彩柄のTシャツを着ている松田家の次男、智之 。
睨み合い、威嚇し合う。
「あれ?智之に、お兄さん、どうしたんですか?」
エレベーターの方から歩いてくる黒髪の爽やかな笑顔の少年が2人に声をかけた。その声の主を2人は見るが、殺気は漂ったままだった。
「よぉ、宮西 弟その1。」
「大介 !これはユユしき事態なんだ!」
「どう見てもいつもの喧嘩にしか見えないんだけど。あ、おばさん、こんにちは。」
少年、宮西大介は2人を横切って玄関先の松田母の隣まで行く。
「あぁ、大介くん、こんにちは。」
「今日は何が原因なんですか?」
「さっきね、智之にお使い頼んだのよ。智裕がついでにポテチを頼んだら、智之がコンソメ味買ってきちゃったのよ。」
「あー……。」
「ところで大介くん、どうしたの?もう5時になるけど。」
「あー、ちょっとばかり避難させて下さい。椋丞が家に彼女 連れてきちゃったんで。」
「ありゃー……じゃあ上がりなさい。ほら、あんた達もバカやってないでさっさと家に入りなさいよ!」
松田母と大介はドアを開けて家の中に入っていった。
それでもこの兄弟の睨み合いは終わらない。
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