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穏やかな休日のフタリ⑦

 洗濯機が終了の合図を鳴らすと、智裕は洗った衣類を洗濯カゴに入れ、ベランダへ出た。  シーツを干して、着てたものやタオルをハンガーに掛けて干した。(こころよ)い風も吹いている。 「とってもいい風だね。」 「これなら早く乾くだろうな。」 「こんなにいい天気なら、公園にお散歩とかもいいかもしれないけど、今日は…無理かな。」  風で揺れるレースのカーテン、差し込み始める南からの太陽の光、心地の良い風、そして隣に座るのは愛しい人。ゆるりと、雲の速度のように流れる時間。 「あー…コーヒーでも飲む?」 「んー……もうちょっと、こうしてたいな…。」 「わかった。」  拓海は智裕に寄り掛かって、頭も肩に乗せて、智裕の左腕をぎゅっと抱きしめる姿勢。智裕は油断するとまた動悸と興奮が素直になりそうだったので、テレビを見て気を紛らわせていた。 「ほっしゃんがさ、拓海さんのこと、すげー男だって言ってた。」 「え……星野(ほしの)先生が?」 「うん。俺らなんかより強い男だって。」 「そんなこと、ないけど……。」 「毎日気ぃ張るのもシンドイだろうから、俺は拓海さんを甘やかせてやれ、って言われた。」  その言葉で拓海も智裕も頬が赤くなる。だけど、拓海の心は溶けるようにあたたかくなる。 「じゃあ…もっと甘えてもいいの?」 「………最高。」  智裕は拓海を自分の太ももの上に乗せて、向かい合わせにすると、そのままキスをした。  それは1回だけで、拓海はそのまま智裕に寄りかかって、智裕の胸に顔を埋めた。 「智裕くん…だぁい好き。」 (茉莉(マツリ)ちゃん、ごめん。もうちょっとだけパパを俺だけのものにさせてね。)

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