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拡散されるマツダくん③

「これ合成じゃねーの?」 「いや、これ俺だから。今日投げたから。」 「俺はお前がアメリカ人相手にバンバン投げたのも信じてねーからな。」 「それは父親のセリフとしてサイテーだぞ。」  父は元々智裕の野球に関してはそこまで熱心ではなく、日本代表になった時の保護者説明会に行った時も建物の中にあった野球史に残る貴重な資料の見学がメインになっていた。 「大体智裕は怪我してから投げられなくなったんでしょ?それが急に今日投げられましたーなんて言われても信じられないわよ。」 「だろ?俺もビビったんだっつの!」 「これでまた(ヒジ)やっちゃいましたー、とかやめてよ。あんた入院したら大変なのお母さんなんだから。」  集団暴行を受けたあと、両親は警察や病院の対応に追われて忙し過ぎたと未だに愚痴をこぼす時がある。  両親は智裕がヒーローになることよりも健康安全第一で日々平々凡々と暮らし、しっかり正社員になって、死ぬまでに孫の顔を見せてくれることだけを望んでいる。 「大介くんは心配してくれるのはありがたいけど、騒ぎになったらなったで仕方ないわよ。」 「おばさん…。」 「それに未成年といっても17歳、自分のことは自分でやるって智裕には教育しているのよ。警察への通報も自分でやればいいのよ。」  放任主義なのか分からないが、大介は「仕方ないな」とため息を吐いた。 「なーなー!にーちゃんテレビ出たら女子アナとかに会うのかな?」 「智之!それ俺も思った!女子アナ来るならあの動画流したやつグッジョブだわ!」 「俺はも●クロの赤だったらいいなー!」 「それはアイドルだろ!俺は、カ●パンだなぁ。あのおっぱい…イヒヒ。」 「お兄さん…顔キモいっすよ。」  こうして夜が更ける間に、SNSは大変なことになっていた。それを智裕本人が知るのは、夜が明けてからだった。

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