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遠くなるフタリ④
「おい、真っ直ぐ教室に来てんじゃねーよ。」
「はい?」
翌日、智裕は朝練を終えて着替えてそのまま教室に入り席に座ると、即、高梨に詰め寄られた。
「昨日のメッセージをスルーしたわけじゃないでしょうね?」
「いや……よ、読みました…けど。」
「それでノコノコと教室に来れるわねぇ、このハゲー!」
「やめて!某国会議員みたいに怖いから!」
「優里 、どうしたの?」
一歩的に険悪になっている2人に近寄って割って入ってきた里崎 が高梨の肩に手を置いた。
「ヨーコさん、このバカ、ツワブキちゃん放ったらかして筋トレばっかしてんだよ⁉︎」
「仕方ねーじゃんか!落ちた筋肉とか体幹とか戻さなきゃなんねーんだし。県予選まで2ヶ月切ってて監督超厳しいんだよぉ…それで…。」
「うわ、サイテー。マジこいつ将来家庭を顧みないで嫁と子供に逃げられるタイプだわ。」
「お前ら帰宅部と文化系だからわかんねーんだよ!」
「黙れ脳筋。」
「ヘタレがスポーツマン気取ってんじゃねーよ。くそヘタレ。」
2人vs.ヘタレ1人で即刻勝負がついた。そして里崎は智裕の生え際にゲンコツを押し付けた。
坊主頭でクッションがなくなったので痛みがダイレクトに伝わる。
「いでででえで!いだいいだい!ヨーコさん!」
「これで先生と破局しても自業自得だかんな、ヘタレが!」
「あんたさ、ツワブキちゃんの方が自分に惚れてるとかちょっと自惚れてんじゃないの?」
グサっと刺さる、まさに少々図星だった。
「石蕗先生なんてね、本当はあんたみたいなヘタレ平凡じゃなくてももっと優良物件を選ぶ権利あんだよ。」
「そーそー、女子からも男子からもツワブキちゃん人気だしねー。」
「寝取られるのも時間の問題じゃない?」
「あー…そういえば最近ツワブキちゃんってほっしゃんとよく一緒にいるなぁ。」
「ほっしゃん⁉︎」
智裕は自宅謹慎の日にもらった電話のことを思い出した。
『お前、成長して俺のマグナムに勝てんの?』
「だめだ!ほっしゃんのマグナムなんてだめだあぁああぁぁ!」
智裕は涙目になって席から勢いよく立ち上がり、その勢いで教室を飛び出した。
朝からとんでもない下ネタを叫ぶ智裕をクラスメートは白い目で見届けた。
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